ドイツ連邦議会選挙

世論調査

ドイツで9月26日、16年首相を務めたアンゲラ・メルケル首相の後任を決める総選挙が行われる。

世論調査では、ショルツ財務相が率いる社会民主党(SPD)の支持率は過去8週間で5ポイント超上昇し、 メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU) を9ポイント上回っている 。

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ドイツの連邦議会で政党が議席を獲得するためには、5%を最低限の得票率とする「阻止条項」をクリアするか、地方選挙で少なくとも3人の候補者が当選する必要がある。

政党

有権者は候補者に直接投票するほか、政党にも投票する。その2回目の投票結果により、連邦議会で最も多くの議席を占める政党が決まり、多数派の政党が次の首相を選ぶ。政権を争う主要政党とその首相候補は以下の通り。

CDU・CSU

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アルミン・ラシェットCDU党首

伝統的なカトリック系の保守政党であるCDUと、バイエルン州の姉妹政党であるCSUで構成。「同盟」と呼ばれ、低税率、財政規律、保守自由主義を掲げる。メルケル首相は2015年、大量の難民を受け入れたため党員が大きく分裂。票を失ったが、与党の座に就いて16年の今年、選挙で勝利する道を改めて模索している。

SPD

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オラフ・ショルツ財務相

ドイツで最も古い民主政党で、中道左派の主要勢力。過去16年間のうち12年間はメルケル首相率いるCDUと連立を組んできたため、明確なアイデンティティーを打ち出すのに苦労している。投資と不平等への取り組みに重点を置いており、最近では環境保護政策に注力。左派指導者で共同党首を務めるエスケン氏とワルターボーヤンス氏は、2019年に就任したが存在感は薄く、中道派のショルツ財務相の支持率が党内では最も高い。

緑の党

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アンナレーナ・ベーアボック共同党首

1960―70年代の環境保護活動家による平和運動から台頭し、シュレーダー政権で初の連立入り。ベーアボック氏とハーベック氏が共同党首を務め、公共投資を増やすため財政規律をより厳格化するなど、明確な社会的・経済的政策を展開し、支持を拡大。気候変動問題への取り組みにも力を入れており、CO2価格の引き上げと内燃エンジンの段階的な廃止も目指す。中国には批判的で、ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツに運ぶ油送管「ノルドストリーム2」にも批判的。

自由民主党(FDP)

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クリスチャン・リントナー党首

「医者と歯科医の党」と呼ばれ、低税率と規制緩和を推進。過去70年間、CDUやSPDと連立し、しばしばキングメーカーに。現在の政策はCDU・CSUに近い。拘束力のある債務ブレーキ条項の復活を目指し、ユーロ圏の財政統合に反対の立場を取る。環境問題では、CO2排出量取引制度によるインセンティブを志向する。

左派党(リンケ)

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ジャニーン・ウィスラー共同党首
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ズザンネ・ヘニッヒ・ウィロー共同党首

旧東ドイツの共産党員を含む極左で、幅広い有権者の支持を得るのに苦労している。富裕層への大幅増税や北大西洋条約機構(NATO)の見直しなどを政策に掲げる。

ドイツのための選択肢(AfD)

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イェルク・モイテン共同代表
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ティノ・クルパラ共同代表

ユーロ圏の債務危機が深刻化した2013年の総選挙前に反EUを掲げて結成されたが、その後何度も党首が交代。反移民を訴える極右政党に変貌した。15年の移民危機に乗じて、17年の選挙では第3党となり、議会では正式に野党となった。

連立

単独で過半数を超える政党がない場合、他の政党と連立を組む必要がある。ここでは、可能性の高いシナリオを挙げる。

現在の支持率
47%
CDU・CSU
SPD

大連立

メルケル首相は4期のうち3期で大連立を組んでおり、CDU・CSUとSPDのいずれからも、連立継続を望む声はほとんどない。特にSPDは別の道を望んでいる。ただ、両陣営は協力し合えることを証明しており、必要であれば環境問題をより重視した「相変わらず」のプログラムを打ち出すことができるだろう。

48%
CDU・CSU
緑の党
自由民主党(FDP)

ジャマイカ連立

CDU・CSU、FDP、緑の党による連立。FDPと緑の党の優先事項、特に財政政策とEUへのアプローチが対立していることを考えると、難しいシナリオだと考える専門家も。2017年の選挙後、メルケル首相の下で連立協議が行われたが、FDPが協議から離脱したことで崩壊。信頼を大きく損なった。

37%
CDU・CSU
緑の党

CDU・CSUと緑の党

最近数週間までは、これが最も可能性の高いシナリオとみられていた。CDUのラシェット党首は、より環境に配慮した政策に前向きであることを明らかにしており、気候変動対策への投資拡大など、財政政策についても妥協の余地があると考えている。この連立は現在、ヘッセン州政府で政権を運営する。

33%
CDU・CSU
自由民主党(FDP)

CDU・CSUとFDP

連邦・州レベルで政権を運営してきた長い歴史があり、両党とも厳格な予算規定と減税を優先する。環境保護政策は、CO2削減目標の達成に、排出権取引制度などの市場手段を利用することが中心。ただ、現在の世論調査の結果によれば、この連立で過半数を得ることは困難とみられる。

62%
CDU・CSU
SPD
緑の党

ケニア連立

CDU・CSU、SPD、緑の党による連立で、議会の大多数を占めることになる。気候変動への取り組み強化では合意可能とみられるが投資、社会、金融政策に関しては大きな隔たりが。

52%
SPD
緑の党
自由民主党(FDP)

信号連立

SPD、FDP、緑の党による連立。低税率と厳しい予算ルールを求めるFDPと、中道左派の2党の間には隔たりがあり、合意は非常に難しいと考えられる。緑の党はCO2排出税の引き上げと、より野心的な排出削減を目指しており、FDPの大幅な譲歩が前提となる。

47%
SPD
緑の党
左派党(リンケ)

SPD、緑の党、左派党

選挙の結果次第で、理論的にはSPDか緑の党のいずれかが主導することになる。SPDは、連邦レベルでは左派党との連立を以前から拒否してきたが、現在はその可能性を排除しておらず、3党はすでに複数の地方議会で政権を運営。支出を増やし、財政規律を緩和し、より厳しい労働規制を課すことが見込まれるが、左派党の一部が急進的な姿勢をとっているため、特に外交政策において問題が発生する可能性がある。

作成

Jon McClure、Prasanta Kumar Dutta、Madeline Chambers、照井裕子

デザイン

Sam Granados

翻訳

田頭淳子

出典

wahlrect.de

調査方法

各政党の世論調査は、現地の多項式回帰を用いて集計。

各調査の誤差はサンプル規模と、独連邦選挙管理委員会から報告された有権者数から推定。

編集

Raissa Kasolowsky、宗えりか