大災害をテーマにした映画は、どれも科学者の警告が無視されるところから始まる。

世界で最も影響力のある環境科学者1000人

大災害をテーマにした映画は、どれも科学者の警告が無視されるところから始まる。

世界で最も影響力のある環境科学者1000人

米科学者のジェームズ・ハンセン氏は1988年、地球温暖化に関する自分の研究について米議会で証言した。それから30年以上が経過し、地球の平均気温が約1度上昇するというハンセンの予測は現実のものとなった。同氏の警告や、科学者らによる行動変革の訴えは、その正しさを示す研究結果が雪崩を打つように積み重ねられたのにもかかわらず、政策立案者によってほとんど無視されてきた。
世界で最も影響力のある環境科学者1000人

特別リポート
自分たちの研究が無視され、破滅的な気候変動を回避するのにほとんど役立たないかもしれないことを承知の上で、人生を研究に捧げた科学者たちは、どのような人たちだったのか。そして、その状況にどう向き合ってきたのだろうか。ある科学者は、それをこう表現している。「データは山のように積みあがっているのに、私はとても無力だ」——。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でも、科学者が直面している困難が浮き彫りになった。ウイルスの感染拡大に関する十分な裏付けのある研究結果を否定したり軽視しようとする国が出るなど、政治と科学の間で、気候変動をめぐる衝突でも見られたような小競り合いが起きた。

そして、昨年は世界的な経済活動の停滞により温室効果ガスの排出量が7%減少したにもかかわらず、大気中の二酸化炭素の濃度は上昇を続け、人類史上最も高い水準に達した。2020年は記録上、過去最高に暑い年となった。


昨年は新型コロナウイルスを巡る激動の出来事がニュースの中心を占めていたが、その間も着々と気候変動は進んでいたのだ。

シベリアではツンドラの凍土が解け、北極圏では記録的な高温が続いた。オーストラリアや米カリフォルニア州では大規模な山火事が発生した。今後も発生するだろう。大型の熱帯低気圧は、より強大になっている。



世界トップレベルの気候科学者たちの研究を俯瞰する今回の企画にあたり、ロイターのデータジャーナリスト、モーリス・タマン記者は、気候科学者をその影響力の大きさでランク付けするシステムを構築した。1)各研究者が何本論文を発表し、2)同じ分野の他の研究者と比較してどれだけ引用されたか、3)一般紙やソーシャルメディア、公共政策文書などでどれほど参照されたか——で影響力を測った。

ロイターは、これを「ホットリスト」と名付けた。

重要なのは、「最高」の気候変動学者のランキングではないということだ。あくまでも2020年12月時点で入手可能な情報を基にした影響力の指標であり、時間の経過とともに自然に変化する。データは、英Digital Science社から提供を受けた。

今回の企画では、少なくとも35万本の論文を調査。その99%が、冒頭のハンセン氏の有名な議会証言の後に発表された。そして、世界のトップ環境科学者1000人のリストを作成した。この大半が男性で、西側研究機関に籍を置いている。

このリストから私たちは、現在の気候変動科学の全体像を把握することができるよう、男性4人、女性2人の計6人(日本語版はそのうち3人)の科学者に取材した。これは、単なる科学の話ではなく、科学を支える人々の物語でもある。

今年は、気候変動の原因を食い止めるための行動に新たな期待が寄せられている。米国は4年間の後退を経て、バイデン大統領がこの深刻な問題に再び取り組むことを約束。中国やほとんどの欧州諸国、そしてサウジアラビアまでをも含む世界最大の燃料消費国および生産国が、今後30年間で二酸化炭素の排出量の大幅削減を約束している。

世界の約200の国々が行動を起こすとしたら、その礎となるのはここに挙げた科学者たちの研究だ。

これらは、彼らの物語である。